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  • 小説で読むインプロ:仮面の教え2

    小説で読むインプロ:仮面の教え2

     妙な仮面に出会ってから数日間、サクルは考えていた。あって然るべきものとはなんだ? 本来あるものとはなんだ? 俺は今まで見てきたものはあって然るべきものだったのか? つまり本来あるものを見てこなかったというのか?

     頭の中がぐるぐるするまま、サクルの足は再びあの公園のベンチに向かった。 あ、やってる。大道芸人たちだ。妙な声で喚いたり、飛んだり跳ねたりしている。チェ、ただの馬鹿騒ぎじゃないか。

     だがベンチに座ったまま見ていると、彼らはどうもただ大騒ぎしているだけではないようだった。たまにポツンと動きが止まるときもある。妙に寂しげに見える時もある。かと思うと子供のように無邪気に太陽を見上げたりする。花の匂いを嗅いで幸せそうにくつろいでいるやつもいる。

     あの仮面たちは、心に浮かんだままを自然に行動しているみたい。今まで、太陽を見上げるだけなんて、したことなかったな。花の匂いを嗅いであんな顔をしたことなかったな。いや、あるぞ、子供の頃だ、たぶん。どうして、やらなくなったんだろう。だって思い付いたままの行動は、なんだかガキっぽいし、学校や先生や親たちからは、ちゃんと考えてから、然るべき行動をとりなさい、と教わってきた。

     ちゃんと考えてから、然るべき行動を取りなさい?

     そうか、ひらめきのままに動いちゃダメだ、と教わってきたんだな、これまで。サクルは初めて気がついた。自分は、思い付いたままの生の気持ちやアイディアを、抑えこんで外に出ないようにしてきた、つまり、見ないようにしてきたんだ。そりゃ面接で線一本書けるはずないよな。気づくと仮面たちが一斉にこっちを見ていた。サクルは慌てて立ち上がり、ベンチを後にした。

    【Live Interaction】
    サクルが気がついたのは「普通の教育は思いつき(ひらめき)を抑えるように仕向けられる」こと。これを逆にひらめきのままに行動するよう促す方向へ教育の舵を切ったのが、『インプロ』の筆者キース・ジョンストンでした。(このくだりは本書14ページにあります。)それは1950年代のことでしたが、当時は非常に革命的なことだったのです。ひらめきのままに生徒を行動させるのは、教師にとっても自殺行為であることは昔も今も変わりません。なにしろ「統率」という概念を捨てなくてはならないわけですから。キースのようにひらめきを発展させるには、『インプロ』をぜひお読みください。人生を豊かにする魔法の書『インプロ』が欲しい方は三輪えり花まで。消費税分は無料でお届けします。メルマガでこの記事を受け取っている方はそのまま返信。ブログでご覧の方は、コンタクトフォームからお申込みください。

  • 小説で読むインプロの生き方:仮面の教え1

    小説で読むインプロの生き方:仮面の教え1

     「では、何かここで描いてみてください」
     今日はコマーシャル制作会社の面接なのだ。
     良い大学に入って良い会社に入りなさい。親にも先生にもそう言われて育ってきたサクルはがんばってきた。言われた通りに勉強し、成績は常に上位10名に入ってきた。大学入試は一度失敗したが、良い大学に入って良い会社に入るのだと思い、たくさん勉強した。

     ただ、サクルにも夢があった。
     何か絵とか映画とか、作れる人になりたいな。
     小さい頃は絵を描くのも好きだった。でも何か描くたびに親も友達も笑った。
    「何それ、変なの」
    「ちょっと、なんでそんなに下手なの?」
    「これキモいよ〜」
    「もうちょっとここに影をつけて」
    「それじゃ影つけすぎでしょ」
    「もっとこうして、もっとああして」

     もうどうしていいかわからなかった。自分には才能がないし、想像力も創造性もないんだ。それだけはわかった。絵を描いたりするのをやめた。
     勉強だけは、批判されなかったし、やったことはやった分だけ正当に点数として評価されるので安心だ。浪人時代にもたくさんのハウトゥを学んだ。国語も文章を書くというより、「正しい意味を選べ」式な選択問題ばかりなので大丈夫だ。それに文章を書く時も、てにをはを間違えず、起承転結に従って、最後に道徳的な教訓を知った、などと入れれば点数が高くなるというハウトゥを学べたので、いわゆる大学入試の小論文もお手のものとなった。こうして苦労して、有名難関大学に入ったのだ。良い会社に入りたい。そうしたらきっと何か良いことがあるに違いない。

     「では、何かここで描いてみてください」
     今日は業界最大手のコマーシャル制作会社の面接なのだ。
     何か絵とか映画とか、作れる人になりたい。良い会社とは、有名な会社、有名な会社とは、売れている会社、稼いでいる会社、そう、コマーシャル制作会社。そこなら何か絵とか映画とかに関わる仕事もできそうだ。良い会社だということで親にも先生にも認められる。サクルの夢も、親や先生に批判されずに叶えられるかもしれない。サクルは緊張してペンを握った。描くぞ、と思った。ワクワクした。円から始めようか、いや円が歪んだら落とされるかも。四角を描こうか、いや四角四面でクリエイティブな人間ではないと思われるかもしれない。数学のグラフなら得意なんだが、きっとそれもクリエイティブじゃないからダメだ。木は? いやきっとデッサンができないからだめだ。犬は? 子供っぽい、却下。人間は? 無理無理。この会社のロゴはどうだ? いや、媚を売っていると思われる。だめ。
     ついに、サクルのペンからはひとつの点も、1本の線も、出てこなかった。

     落胆して帰路に着くサクルは、公園のベンチに腰を降ろした。俺はなんてダメなんだ。結局夢は夢か。そういえば、夜眠っている時に見る夢も「夢」。叶えたいことも「夢」と呼ぶのは、それが絶対にできないから、絶対に実現しないから、なんだろうな。英語でも同じように使うよな。全世界、同じなんだろうか。 そんなことをぼんやり考えていると、足元にカラフルな球が転がってきた。気づくと明るい音楽と笑い声が聞こえてきて、ピエロが一人、その球を拾いにやってきた。ピエロ、というより仮面だ。サクルの知っているピエロは、ハンバーガー屋の軒先に座っている人形のキャラクターのように赤い縮れ髪で白い白粉をべったりと塗っていて、分厚い真っ赤な唇を無理やり笑わせて赤い丸い鼻をつけているやつだが、こいつは違う。子供が作ったような幼稚な仮面をつけている。そいつは球を拾うとサクルにそれを差し出した。サクルが身振りで、いらないとすると、そいつは驚いて球を引っ込めた。が、またそれを差し出した。まるでとても美味しいものをどうぞ、と言わんばかりに。サクルが受け取ろうとすると、そいつは今度はそれを引っ込めた。なんだよ。どっちなんだよ。そいつはカラカラと、人生が吹っ飛ぶような明るい笑い声をあげて、サクルの隣に座った。 
    「あって然るべきものだけを見ている人には、本来あるものが見えてこない」
    仮面はそれだけ真面目な声で言ったかと思うとまたカラカラと笑って踊りながら去っていった。

    【Live Interaction】
    仮面が言った言葉はキース・ジョンストンの『インプロ』13ページにあります。人生を豊かにする魔法の書『インプロ』が欲しい方は三輪えり花まで。消費税分は無料でお届けします。メルマガでこの記事を受け取っている方はそのまま返信。ブログでご覧の方は、コンタクトフォームからお申込みください。

  • インプロのお約束3点セット

    インプロをやるとき、守るべき約束があります。
    「インプロをやる」ということ自体が、「インプロ・ゲーム」を使って、インプロの練習をすること。ですから、ゲームをやりながら技術が身に付くわけです。
    で、インプロ・ゲームは、「ゲーム」なので勝ち負けや、勝ち残り線や、ドロップアウトなどがあります。
    ゲームごとのルールもありますが、全てに通じる約束事があるのです。
    すっごく簡単。その約束をやろう、とするだけで、インプロができてしまうという優れもの。

    1. 相手や周りにあるものからネタをもらう
    2. なんでもあり(個人攻撃にならない限り)
    3. ゲームに負けたとき、適当な言い訳を見つけて正当に退場する

    たったの3点。
    でもどれも本当に重要。
    インプロ・ゲームに参加する時、ぜひこれらを使ってみてくださいね。

  • うまいアドリブ

    アドリブと台本

    アドリブは自信を作る

    演技を学び始めて間もない人たちは、アドリブができると、とても喜びを感じます。台本や予定以外のこと、突然のアクシデントに見舞われた時に、自らのひらめきで何かをやり、その場を収めることができると、自分の力を信じる縁(よすが)になるからです。

    台本や予定は、他者が決めたこと。そして、台本や予定があると、「決められた通りにやらなくてはいけない」と皆が思い込みがちです。本当は、台本や予定が定められたら、「そのうえで自分らしく何ができるか」をすれば良いのですが、演技を始めて間もない人たちは、そしてとくに日本人は「誰かに言われた通りのことをする」習性がものすごく強いので、なかなか「自分らしく料理する」ところまでいけないのですね。

    けれど、なにかアクシデントがあると、「その場を乗り越えなくては」と危機管理能力が働き、自らの裁量でなんとかするわけです。そしてその危機を脱したら、その人は、何があっても自分には何らかの乗り越える力がある、と自分を信じることができるようになるでしょう。

    台本に出てくる人たちもアドリブをしている

    全てのキャラクターは、その場その場の危機をなんらかの方法で脱しようとして四苦八苦しているのだと思ってみてください。

    つまり、あなたが台本通りにやろうとしているのに何か邪魔が入った時、それを「えーい、俺、もうこれやっちゃうよ」というノリでその場を何とかしようとする、それとおなじことを各キャラクターがやっているのと同じ状態というわけです。

    そう思ってもう一度台本を見てみましょう。

    危機に陥った時、人によって、どんなチョイスをするかは異なります。あなたはただ、そのキャラクターのチョイスを知るだけです。あなたにはあなたのチョイスがあると思いますが、あなたの演じるキャラクターには、その人なりのチョイスがあります。そのようなチョイスをする傾向のある人とは、どんな人なのでしょう?

    どんなアドリブをする人なのか

    どんなチョイスをする傾向のある人なのか。

    実は、これが、「登場人物」のことを英語で「キャラクター Character」という所以(ゆえん)です。この面白い話は、また別の記事でお話ししますね。

    さて、話を元に戻しますと・・・

    危機に陥って、あなたがアドリブをして、その場を取り繕うことができて、喜びを感じた。それはとても良いことです。最初のうちはそれで良いのです。

    けれど、いずれ、それが、キャラクターのチョイスではなく、普段のあなたのチョイスにすぎないことに気づいていきましょう。

    「あなた」がアドリブができて喜んで飛び跳ねている時代はあっても良い。けれど、その先に、「キャラクター」のアドリブの連続で台本が成り立っていることがわかれば、あなたの演技の才能は見事に開くはずです。

    即興は練習できるし、上手くなれる

    そのためには、演技訓練で、即興(インプロビゼーション。インプロ)の練習は必須です。

    私(三輪えり花)は、台本読解をとても大事にしますが、それは、キャラクターがインプロをできるようになるまで、演者が台本を読み込むべきだ、と思っているからです。

    即興(インプロ)を一人でも練習できる『インプロ:自由自在な行動表現』が役に立ちますよ。
    文字が多いように感じるかもしれませんが、エクササイズを声に出して読んでみるだけでも「なるほど!」がたくさん見つかります。
    そして、ぜひ、文章に心を添わせてじっくり読んでみてください。あなたも素晴らしいアーティストになれることがわかりますから。